「32GBのメモリが3万円…? 嘘だろ?」
久しぶりにPCパーツショップの価格表を見たあなたは、我が目を疑ったはずです。 ほんの半年ほど前、2025年の春頃には1万5000円でお釣りが来たはずの「DDR5-5600 32GBキット」。それが今、3万円〜3万5000円という、信じられないプライスタグを掲げています。
「SSDが高い」と言われていたのはもう過去の話。今、自作PCユーザーの財布を最も激しく攻撃しているのは、間違いなく**「メモリ(DRAM)」**です。 しかも、逃げ道だと思われていた「DDR4」までもが値上がりを始めています。
なぜ、こんなことになったのか? これは一時的なバブルなのか、それとも「新しい価格の常識(ニューノーマル)」なのか?
この記事では、PCBUILDBASEの総力を挙げ、市場で起きているパニックの真相を「証跡」と共に解明。そして、混乱する市場の中で**「いつ買うのが正解なのか」**という問いに、明確な答えを出します。
第1章:【現状分析】チャートが壊れた。2025年秋の「メモリ・ショック」
まずは、感情論抜きにして、冷酷な「数字」と向き合いましょう。秋葉原および主要ネットショップの最安値データを時系列で追うと、事態の深刻さが浮き彫りになります。
1-1. DDR5メモリ:半年で価格が「2倍」に
最も標準的なスペックである「DDR5-5600 / 32GBキット(16GB×2)」の価格推移です。
2025年3月(底値圏): 13,800円 〜 15,800円
自作PCユーザーが「DDR5も安くなったね」と笑顔で語っていた時期です。
2025年8月(上昇の兆し): 18,000円 〜 22,000円
「ちょっと高くなってきたな」と感じ始めましたが、まだ許容範囲でした。
2025年11月(現在): 30,000円 〜 38,000円
異常事態です。 特に10月以降の上げ幅が垂直に近く、週単位で数千円ずつ値札が書き換えられています。人気モデル(Crucial ProやCorsair Vengeance)の一部は在庫切れを起こし、転売価格のような値段でしか手に入らなくなっています。
1-2. DDR4メモリ:逃げ場のない「連れ高」
「DDR5が高いなら、DDR4で組めばいいじゃない」 その逃げ道も塞がれつつあります。「DDR4-3200 / 32GBキット」の価格推移です。
2025年3月: 9,000円 〜 10,000円
1万円を切るのが当たり前でした。
2025年11月(現在): 14,000円 〜 16,000円
約1.5倍の上昇です。DDR5ほどの爆発力はありませんが、「枯れた技術」であるはずの製品がこれほど値上がりするのは、過去の自作PC史を見ても極めて稀な現象です。
第2章:【証跡・エビデンス】なぜDDR5は「倍」になったのか?
ショップが儲けようとして値上げしているわけではありません。原因は、半導体メーカー(Samsung、SK Hynix、Micron)の工場で起きています。 ここからは、複数の**「証跡(Evidence)」**を提示しながら、値上がりの真犯人を特定します。
真犯人①:AIという怪物が「生産ライン」を食い尽くした
最大にして最強の原因です。生成AIブームにより、NVIDIAのGPU(Blackwell世代など)に搭載される**HBM(High Bandwidth Memory)**の需要が爆発しました。
【証跡:TrendForceの市場レポート】 半導体市場調査会社TrendForceの2025年第3四半期レポートによると、DRAMメーカー大手3社は、HBMの生産能力を前年比で約250%以上に拡大させています。 ここで問題なのは**「ウェハの奪い合い」**です。
HBM(AI用メモリ)を作るには、通常のDDR5メモリを作るのと比べて、約3倍のウェハ面積が必要とされています。
つまり、**「HBMを1個増産すると、PC用のDDR5メモリが3個減る」**という物理的なトレードオフが発生します。
メーカーにとっては、利益率が桁違いに高いHBMを作った方が儲かります。そのため、PC用DDR5の生産ラインを潰し、HBM用ラインに書き換える工事が世界中で行われました。その結果、我々自作ユーザーに回ってくるDDR5の供給量が激減したのです。
真犯人②:サーバー需要の予期せぬ復活
AIサーバーだけでなく、一般的なデータセンターのサーバー更新需要(リプレース)が、2025年後半に集中しました。
【証跡:Micron Technology決算発表】 Micron社のCEOは決算会見で、「データセンター向けの在庫調整が完了し、DDR5への強い需要が戻ってきた」と発言しています。 サーバー用のDDR5メモリと、PC用のDDR5メモリは、基本的には同じ生産ラインから生まれます。
品質が良いチップ → 高値でサーバー用に売られる
それ以外 → PC用に回される 現在、サーバー企業が「言い値」でDDR5を買い漁っているため、PC市場に降りてくるチップの量が枯渇しているのです。
真犯人③:メーカーの「出荷調整」という名の出し渋り
これが直近(10月〜11月)の急騰の直接的な原因です。
【証跡:スポット価格と契約価格の乖離】 DRAM市場には、大口契約の「コントラクト価格」と、日々変動する「スポット価格」があります。 通常、需要が増えれば両方上がりますが、今回はメーカー側が**「スポット市場への出荷を意図的に停止・遅延させている」**という観測が出ています。 「来月になればもっと高く売れる」と確信したメーカーや代理店が、在庫を抱え込み、市場に流さないようにしている(売り惜しみ)。これにより、店頭在庫がショートし、パニック的な価格上昇を招いています。
第3章:【証跡・エビデンス】なぜDDR4まで高くなる?
「DDR4なんて、もう誰も作ってないんじゃないの?」 その通りです。だからこそ高いのです。DDR5とは全く異なるロジックで値上がりしています。
真犯人④:レガシー製品の「End of Life(生産終了)」戦略
SamsungやSK Hynixにとって、利益の薄いDDR4を作り続けるメリットはゼロに等しいです。
【証跡:生産ラインの稼働率データ】 業界レポートによると、主要メーカーのDDR4生産ラインの稼働率は、2024年を通じて段階的に引き下げられています。 古いラインは閉鎖されるか、あるいはCMOSイメージセンサー(カメラ用部品)の製造ラインに転用されています。 つまり、**「供給量が需要の減少スピードよりも早く減っている」**のです。
真犯人⑤:DDR5高騰による「難民の流入」
DDR5が3万円を超えたことで、多くの自作ユーザーがこう考えました。 「DDR5は無理だ。マザーボードをDDR4版にして、安く組もう」 この**「DDR5難民」**が、減産中のDDR4市場に雪崩れ込みました。 減っている在庫に対して、予想外の買い注文が殺到した結果、需給バランスが崩壊。ショップ側も「DDR4も高く売れるぞ」と判断し、価格を吊り上げざるを得なくなったのです。
第4章:【未来予測】2026年の価格はどうなる?
この地獄のような相場はいつ終わるのか? 残念ながら、PCBUILDBASEの予測は**「極めて悲観的」**です。
短期予測(〜2026年3月):さらなる上昇
予測: 32GBキットの実勢価格は40,000円を突破する可能性があります。
理由: 年末商戦と旧正月(春節)に向けた在庫確保の動きが活発化するためです。また、日本の場合は「円安」が進行すれば、為替のダブルパンチでさらに高くなります。
中期予測(2026年4月〜9月):高値横ばい
予測: 急激な上昇は止まるものの、下がる気配は見えません。
理由: HBM4(次世代AIメモリ)の量産が始まるため、DRAMの生産能力は依然としてAIに吸われます。PC用メモリの増産が行われる気配はありません。
長期予測(2026年10月〜):緩やかな下落?
予測: ここまで来てようやく、需給が緩和する可能性があります。
理由: 各メーカーの新工場が稼働し始める時期です。また、AIバブルが落ち着けば、生産能力がPC用に戻ってくる可能性があります。しかし、「2023年の安値(1万4000円)」に戻ることは二度とないでしょう。
第5章:【最終結論】今、いつ買うべきか?
「待てば安くなる」という自作PC界の格言は、今のメモリ市場には通用しません。 以下に、ユーザーの状況別の「最適解」を提示します。
ケースA:今すぐPCが必要な人
【結論】涙を飲んで、今すぐ「3万円」で買ってください。
来週には3万2000円、再来週には3万5000円になっているリスクが高いです。 「高いから様子見」をして、1ヶ月後にさらに5,000円高く買うことになるのが最悪のシナリオです。 Amazon、ツクモ、ドスパラ、アーク、すべてのショップを巡回し、「在庫あり」を見つけたら即決済。これが唯一の防衛策です。
ケースB:ブラックフライデー・年末セール狙いの人
【結論】「セット割」に活路を見出してください。
メモリ単体の価格は絶望的ですが、ショップ側も「PCが売れない」と困ります。そのため、「CPU + マザーボード + メモリ」の3点セットなどにして、利益を調整して販売するケースが増えます。 ブラックフライデーでは、メモリ単体の値引きを期待するのではなく、**「セット購入でのトータルコスト削減」**を狙うのが賢い戦略です。
ケースC:DDR4で妥協しようとしている人
【結論】悪いことは言いません。高くてもDDR5にしておきなさい。
DDR4も1万5000円を超えてきました。DDR5との差額は1万5000円程度です。 しかし、DDR4は「将来性ゼロ」の規格です。次にPCをアップグレードする時、メモリはゴミになります。 一方、DDR5は次の数年間使い回せます。 **「今1万5000円ケチって将来性を捨てる」よりは、「高くても資産価値のあるDDR5を買う」**方が、長期的なコスパは絶対に上です。
第6章:生き残るための「裏技」と「妥協案」
まともに3万円を払うのが辛い人のために、いくつかの抜け道を紹介します。
裏技①:「48GBキット / 24GBキット」を探す
DDR5には、16GBや32GBといったキリの良い数字ではない、「24GBモジュール」を使った**「48GBキット(24GB×2)」**が存在します。 これは32GBキットに比べて流通量が少なく、注目されていないため、値上がりの波に乗り遅れて価格が据え置かれている場合があります。 「32GBが3万円なのに、48GBが3万5000円」なら、GB単価で言えば48GBの方がお得です。ショップの在庫をくまなく探してください。
裏技②:米Amazon(Amazon.com)からの個人輸入
円安とはいえ、日本国内の「代理店マージン」や「便乗値上げ」が含まれていない分、アメリカのAmazonの方がまだ安いケースがあります。 送料を含めても日本より数千円安いなら、チャレンジする価値はあります。ただし、初期不良時の返品が面倒な点は覚悟してください。
裏技③:ネイティブメモリ(JEDEC準拠)を避ける
「Crucial」や「Samsung」純正などの、何も設定せずに安定して動くメモリ(ネイティブメモリ)は、プロや企業が買い占めるため最も高騰しています。 逆に、**「派手に光るOCメモリ(XMP/EXPO)」**の方が、ゲーマーしか買わないため在庫が残っており、相対的に割安になっている逆転現象が起きています。 「光るメモリなんていらない」と思わず、値段を見て安い方を選んでください。
まとめ:これは「災害」であると認識せよ
2025年冬のメモリ相場は、通常の需給変動ではありません。 AIという産業革命が生んだ**「シリコン資源の争奪戦」**に、我々PCユーザーが巻き込まれた形です。
DDR5: 倍増(3万円オーバー)。AIとサーバーに吸われている。
DDR4: 1.5倍増。生産終了と難民流入で高騰。
SSD: 高止まり。
「高い!」と怒っても価格は下がりません。 今、我々にできることは、**「必要な容量を、在庫があるうちに確保すること」**だけです。
この記事を読んでいる今、この瞬間が、今後半年間で「一番安い瞬間」かもしれません。 購入ボタンを押す指を震わせながら、それでも前に進む。それが2025年を生きる自作erの覚悟です。










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