はじめに:なぜ世界中の自作erはLian Liに魅せられるのか?
自作PCの世界には「流行」がありますが、Lian Li(Lian Li Industrial Co., Ltd.)は流行を追うのではなく、「流行を作る」メーカーです。
かつては「高級アルミケースの老舗」という渋いイメージでしたが、ここ数年でそのブランドイメージは激変しました。「O11 Dynamic」による魅せるPC(ショーケース)の確立、「UNI FAN」による配線革命。これらは全てLian Liが震源地です。
この記事では、台湾の巨人Lian Liの歴史から、現行の主力ケース、革命的なファン技術、そして2025年の最新トレンドまで、どこよりも詳しく解説します。
第1章:Lian Liの歴史と設計思想 ~アルミ職人からトレンドセッターへ~
1-1. 「アルミのLian Li」の起源
Lian Liは1983年に台湾で設立されました。創業当初から一貫しているのは**「金属加工技術への執念」です。 2000年代~2010年代前半、多くのPCケースが安価なスチール(鉄)とプラスチックで作られる中、Lian Liは「フルアルミニウム」**にこだわりました。 ヘアライン加工された美しいアルミパネル、軽量かつ高い放熱性、そして精度の高い工作技術。「いつかはLian Li」と言われるほどの高級ブランドとしての地位を確立したのはこの時期です。
1-2. 転換点:Der8auerとのコラボと「ガラス」への挑戦
大きな転換点は、著名なオーバークロッカーDer8auer(ダーバウアー)氏とのコラボレーションです。 伝統的なアルミ加工技術に、現代的な「強化ガラス(Tempered Glass)」と「水冷ラジエーターへの最適化」を組み合わせることで、伝説の名機『PC-O11 Dynamic』が誕生しました。これが現在の「ピラーレス(支柱なし)ケースブーム」の源流となります。
第2章:【ケース編】PCケースの概念を変えた主力シリーズ
Lian Liのケースは現在、主に3つのラインに分かれています。それぞれの特徴と「なぜ選ばれるのか」を深掘りします。
2-1. 『O11』シリーズ:現代PCケースの「王」
現在の自作PCシーンを支配していると言っても過言ではないシリーズです。最大の特徴は**「デュアルチャンバー構造」**です。
デュアルチャンバーとは?
ケース内を左右(または前後)に分け、左側に「マザーボード・GPU・水冷」などの魅せるパーツを、右側(裏側)に「電源・ストレージ・配線」などの隠したいパーツを配置する構造。
メリット: 配線が隠しやすい、エアフローが干渉しない、見た目が極めて美しい。
① O11 Dynamic EVO / EVO RGB / EVO XL
現行のスタンダードです。「EVO」の名がついたモデルは、さらに進化し**「リバーシブル構造」**を採用しています。
特徴: ケースを分解し、上下を反転させることで「左側にガラス面を持ってくる(机の左側に置ける)」ことが可能。
2025年の評価: カスタマイズ性が異常に高く、オプションパーツでフロントメッシュ化や縦置きGPU化が可能。拡張性を求めるならこれ一択。
② O11 Vision(2024-2025年の主役)
今、最も映えるケースです。
特徴: フロント、左サイド、そして**「トップ(天面)」**までもがガラス。
革新点: 従来、天面にはラジエーター用の排気口が必要でしたが、マザーボードトレイ背面に排気スペースを設けることで、**「3面ガラスの完全なショーケース」**を実現しました。
ピラーレスの極み: 金属の支柱が視界を遮らないため、中のフィギュアや高価なパーツがまるで宙に浮いているように見えます。
③ O11 Dynamic Mini / Air Mini
特徴: O11のデザインをそのまま小型化。電源ユニットをSFXサイズに限定することでコンパクト化を実現(Air MiniはATX電源対応)。
評価: 机の上に置いても圧迫感が少ないため、日本の住宅事情に最もマッチしたモデル。
2-2. 『LANCOOL』シリーズ:空冷最強のエアフローお化け
O11が「水冷と魅せること」に特化しているなら、LANCOOLは**「実用性と冷却性能」**に特化したシリーズです。
① LANCOOL 216
特徴: フロントに巨大な160mmファンを2基標準搭載。
強み: 箱から出してそのまま使うだけで、ハイエンドパーツを冷やしきる圧倒的な風量。水冷クーラーを使わず、空冷CPUクーラーで組みたいユーザーの最適解です。
細かい配慮: リアファンの位置を変えて、GPUを冷やすための外部ファンを取り付けるブラケットが付属するなど、「冷やすこと」への執着が凄まじいモデル。
② LANCOOL III
特徴: 4枚のドアが開閉するギミック満載のフルタワー寄りミドルタワー。
強み: 420mmラジエーター対応など、拡張性はO11並み。サイドがメッシュとガラスのハイブリッドになっており、冷却と見た目を両立。
2-3. 『A4-H2O』『Q58』:SFF(小型PC)への回答
Lian LiはDAN Casesとコラボし、小型PC(Small Form Factor)でも覇権を握っています。
A4-H2O: 容量わずか11リットルながら、240mm簡易水冷と3スロットGPUが入る奇跡の設計。
Q58: サイドパネルが上下分割式(上がガラス、下がメッシュ)になっており、見た目と冷却を調整可能。
2-4. 2025年注目の異端児『SUP01』
2024年に発表され、2025年のトレンドになりそうなのがこの『SUP01』です。
概念の破壊: 従来の「横置きGPU」でも「縦置きGPU」でもなく、**「フロントパネルの裏にGPUを吊るす」**という驚愕のレイアウト。
メリット: GPUの排熱を直接ケース外へ放出できるため、CPUへの熱干渉がゼロ。ケース幅を極限まで薄くできる(フットプリントが小さい)。
第3章:【ファン・冷却編】UNI FANによる「配線革命」
Lian Liを語る上で絶対に外せないのが、連結ファンシステム**「UNI FAN(ユニファン)」**です。 これが出るまで、自作PCの配線は地獄でした。ファン1つにつき「PWMケーブル」と「ARGBケーブル」の2本が必要で、ケースファンを9個つけると18本のケーブルが裏配線を埋め尽くしていたのです。
3-1. UNI FANの仕組み:デイジーチェーン
UNI FANは、ファン同士をスライドさせて物理的に連結し、接点で信号を送ります。 これにより、**「3連ファンでも、出るケーブルはたったの1本」**になりました。この発明はPC自作史に残る革命であり、他社(CorsairやPhanteks)も追随せざるを得なくなりました。
3-2. UNI FANの進化系譜
SL V2 / SL-INF(Infinity):
SL-INF: ファンの中心と側面に「無限鏡(インフィニティミラー)」を搭載。どこから見ても奥行きがあるように光る、現在のInstagram/TikTok映えPCの標準装備。
AL V2:
風量重視モデル。SLよりも羽が大きく、ラジエーター冷却に向いている。
TL / TL LCD(最新):
TL LCD: ファンの中心(軸部分)に1.6インチの液晶画面を搭載。
できること: CPU温度やGPU負荷率の表示はもちろん、好きなGIF動画や画像を再生可能。「ファンの中でアイアンマンのアークリアクターが回っている」ような演出も可能です。
3-3. GALAHAD II(ガラハド)シリーズ:AIO水冷
冷却ヘッドのデザインが特徴的な簡易水冷クーラー。
GALAHAD II LCD: ヘッドに大型液晶を搭載。L-Connect 3ソフトで制御可能。
パフォーマンス: Asetek製の第8世代ポンプを採用したモデルもあり、冷却性能はトップクラス。特にUNI FANと組み合わせた時の統一感は随一です。
第4章:【アクセサリー・その他】痒い所に手が届くLian Li製品
4-1. Strimer Plus V2(ストライマー・プラス)
「電源ケーブルを光らせる」という狂気とも言える発想を製品化したもの。 マザーボードの24ピンやGPUの8ピンケーブルの上にかぶせるLEDストリップです。
効果: PC内部で最も太くて邪魔なケーブルが、逆に**「主役級の照明」**に変わります。サイバーパンクな雰囲気を出すなら必須アイテム。
4-2. デスクPC(DKシリーズ)
「机の中にPCを埋め込む」のではなく、**「机そのものがPCケース」**というロマン製品。
DK-04 / DK-05F: 天板が調光ガラスになっており、ボタン一つで透明(中が見える)⇔不透明(ただの机)に切り替わります。価格は数十万円クラスですが、究極のミニマリズムとして需要があります。
第5章:ソフトウェアと注意点 ~Lian Liの弱点~
ここまで絶賛してきましたが、弱点も正直に解説します。
5-1. 統合ソフト「L-Connect 3」の功罪
UNI FANやStrimer、AIO水冷を一括管理するソフトが「L-Connect 3」です。
良い点: 直感的なUIで、ファンの回転数やライティングを非常に細かく設定可能。「マージ機能」を使えば、連結したファン全体で一つの波紋のような光り方をさせることができます。
悪い点(注意点):
常駐負荷: バックグラウンドでのリソース消費がやや高めな時期があった(アップデートで改善傾向)。
USB競合: 多数のコントローラー(TLシリーズ用、SLシリーズ用、Strimer用など)をUSB2.0ヘッダーに繋ぐため、マザーボードによっては電力不足や認識不良が起きることがある。
対策: NZXTのUSBハブなどを別途用意し、電力供給を安定させるのが「Lian Li使い」の常識となっています。
第6章:【2025年版】Lian Liで組むならこう選べ!おすすめ構成例
PCBUILDBASE読者のために、目的別のおすすめ「Lian Liセット」を提案します。
構成A:【究極の美】ピラーレス・ディスプレイ特化
ケース: O11 Vision(White または Chrome)
ファン: UNI FAN TL LCD(リア・ボトム)、SL-INF(サイド)
クーラー: GALAHAD II LCD
その他: Strimer Plus V2 24pin
解説: とにかく「画面」と「鏡」で埋め尽くす構成。Chromeモデルを選ぶと、電源OFF時はマジックミラーのように周りが映り込み、高級インテリアになります。
構成B:【実用とロマン】ハイエンドゲーミング冷却
ケース: O11 Dynamic EVO XL
ファン: UNI FAN P28(光らないが高性能) または AL V2
解説: EVO XLの広大なスペースを活かし、420mmラジエーターやプッシュプル構成(ラジエーターをファンで挟む)を採用。静音性と冷却を極限まで高める構成。
構成C:【コスパ&エアフロー】空冷ゲーミング
ケース: LANCOOL 216 RGB
ファン: 標準搭載のままでOK
解説: 追加投資なしで最強クラスのエアフロー。予算を全てGPU(RTX 4070 Ti SUPERなど)に回したい賢いゲーマー向け。
まとめ:Lian Liは「PCパーツ」を「インテリア」に昇華させた
Lian Liの製品を選ぶということは、単にパソコンの箱を選ぶということではありません。部屋の主役となる**「デジタル・アートフレーム」を選ぶ**のと同義です。
組み立てやすさ: デュアルチャンバーやツールレス機構による圧倒的な親切設計。
拡張性: 将来どんな大型パーツが出ても対応できる余裕。
所有欲: アルミとガラスの質感が生み出す高級感。
もしあなたが「ただ動けばいいPC」ではなく、「毎日眺めてニヤニヤできるPC」を作りたいなら、Lian Liは間違いなく最良のパートナーになります。2025年も、彼らの革新(特にSUP01のような変態的レイアウトや、液晶ファンの進化)から目が離せません。
さあ、あなたもLian Liで、自分だけの「要塞」を築き上げませんか?










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