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【2025年冬】メモリ高騰のパラドックス。なぜCPUとマザーボードは「値下げ」を余儀なくされたのか?

「メモリとSSDが高すぎて、見積もりの総額が合わない……」 2025年後半、自作PC市場は深刻なメモリパーツの高騰に直面しています。

しかし、市場を冷静に分析すると、奇妙な現象が起きていることに気づきます。メモリ価格の上昇に反比例するように、CPUとマザーボードの価格が静かに、しかし確実に下落しているのです。

これは単なるセールの安売りではありません。PCパーツ市場のエコシステム全体が生き残るために発生した、**必然的な「価格調整」**です。

今回は、なぜメモリ高騰がCPUとマザーボードの「値下げ」を強制するのか、その経済的なメカニズムと、今まさに市場で起きている**具体的な「歪み(=買い時)」**について解説します。


目次

1. 「補完財」のジレンマ:PC市場が直面した強制力

経済学には**「補完財(Complementary goods)」**という概念があります。 CPU、マザーボード、メモリは、単体では機能せず、セットになって初めて価値を持つ製品群です。

「総額」という絶対的な壁

PCを購入するユーザーの予算には限界があります(例:20万円)。 メモリ価格が高騰し、その構成比率が肥大化すると、当然ながら総額は予算をオーバーします。

  • これまで: CPU(30%) + マザー(20%) + メモリ(10%) + その他 = 100%

  • 現在: CPU(30%) + マザー(20%) + メモリ(20%) + その他 = 110%(予算オーバー)

この「10%の超過」が発生した瞬間、顧客は購入自体を諦めてしまいます。 これを防ぐため、市場(メーカーや代理店、ショップ)は、コントロール不可能なメモリ価格の上昇分を、コントロール可能なCPUやマザーボードの価格を削ることで吸収し、総額を「100%」に戻さざるを得なくなったのです。

つまり、現在のCPU安は「売りたいから安くした」のではなく、**「安くしないと市場そのものが死ぬから、下げざるを得なかった」**という構造的な要因によるものです。


2. 2025年11月現在、市場で起きている「具体的な現象」

この力が働いた結果、現在の店頭やネットショップでは、過去に見られないような**「歪なセット販売」**が常態化しています。具体的な事例を見てみましょう。

ケース①:最新プラットフォーム(Core Ultra 200 / Ryzen 9000)の実質値下げ

最新CPU(Intel Core Ultra 200シリーズやAMD Ryzen 9000シリーズ)は、本来であれば発売直後の「ご祝儀価格」が維持される時期です。 しかし、これらは高価な高速DDR5メモリが必須であるため、メモリ高騰の煽りを最も強く受けています。

結果として、以下のような現象が起きています。

  • マザーボードのバンドル割引が「倍増」: 通常なら「CPUとセットで3,000円引き」程度のキャンペーンが、現在は**「8,000円~12,000円引き」**に拡大しています。マザーボード単体の利益をほぼ吐き出してでも、プラットフォーム全体を買わせるための苦肉の策です。

ケース②:ミドルレンジ(B760 / B650)マザーボードの価格改定

最も顕著なのがマザーボードの単価下落です。

  • 現象: 2万円台後半だったミドルレンジ帯のマザーボードが、1万円台後半~2万円前半へシフトしています。

  • 理由: メモリにお金を吸われたユーザーが、真っ先に削るのがマザーボードのグレードです。メーカー側は、ユーザーを逃がさないために、**上位機能を削らずに価格レンジを一段階下げた「新価格版(Refreshモデル)」**を投入せざるを得ない状況になっています。


3. なぜメモリだけが「高止まり」し続けるのか?

「もう少し待てばメモリも下がるのでは?」と思うかもしれませんが、その望みは薄いと言わざるを得ません。

  • AI需要による「供給の枯渇」: データセンター向けのHBM(AI用メモリ)やエンタープライズSSDへの需要が爆発しており、SamsungやMicronといった主要ベンダーは生産ラインをそちらに集中させています。

  • コンシューマー軽視の加速: 我々が使うPC用メモリ(DDR5)は、メーカーにとって利益率の低い製品になりつつあります。この供給不足は構造的なものであり、ショップレベルの努力で解決できる問題ではありません。

だからこそ、その「しわ寄せ」をCPUとマザーボードが被り続ける構図は、当面続くと予想されます。


4. この相場で「賢く立ち回る」ための最適解

この「メモリ高・CPU安」という歪んだ市場環境において、最も賢いPCの組み方は以下の通りです。

戦略①:マザーボードの「セット割」を徹底活用する

ショップ側がメモリ高騰の相殺役として用意している**「CPU+マザーボードのセット割引」**は、今が最も割引率が高い状態です。 普段なら予算オーバーで諦めていた「ワンランク上のチップセット(Z890やX870など)」が、セット割適用によって実質的なミドルレンジ価格まで降りてきています。これを狙わない手はありません。

戦略②:CPUは「コスパ」ではなく「絶対性能」で選んでいい

CPU自体の単価も押し下げ圧力が働いています。 これまでは「Core i5 / Ryzen 5」を選んでいた予算感で、一つ上の**「Core i7 / Ryzen 7」**に手が届くケースが増えています。メモリが高い分、CPU側でお得感を回収する構成が正解です。

戦略③:メモリは「拡張性」を残して最小限に

高騰しているメモリは、「今必要な最低限(例:16GB×2枚)」に留めましょう。 重要なのは、**「将来安くなった時に増設できる空きスロット」**を確保しておくことです。そのためにも、戦略①で良いマザーボード(4スロット版)を選んでおくことが効いてきます。


まとめ:市場の「生存本能」を利用せよ

現在のPCパーツ市場は、メモリ高騰という向かい風の中で生き残るために、CPUとマザーボードの価格を強制的に調整しています。

「メモリが高いから今は買い時ではない」と嘆くのではなく、**「メモリが高いからこそ、高性能なCPUやマザーボードが安く手に入るチャンスが来ている」**と捉えてください。

市場がバランスを取ろうとする力学(メカニズム)を理解し、歪みが生じている箇所を的確に突くこと。それが、2025年冬の自作PCにおける勝利の方程式です。

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